SDGs
政策科学研究所のおける「総合知」シンポジウムと本学SDGs宣言
2015年、『国連持続可能な開発サミット』が開催され、普遍的な国際社会全体の目標、すなわち「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が、全会一致で採択されました。国際連合が目標に掲げて以降、先進国を中心に世界中で取り組まれている持続可能な開発目標(SDGs)ですが、本学では多くの部局においてこれを意識した様々な取り組みが行われています。兵庫県立大学は、安全で平和な社会の実現のために、そして全世界の幸福と福祉に貢献するために、2022年3月23日に、SDGs 宣言を発しています(兵庫県立大学SDGs宣言はコチラ)
政策科学研究所でも、本学SDGs宣言に対応した活動を展開させています。その主なテーマは、“サステイナブルで豊かな社会の実現への貢献”です。地球環境が人間による活動で大きく変化していることを始め、現在、様々な影響が生態系や人間社会に広範囲に及んでおり、サステイナブルで豊かな社会の実現が、我々の周辺でも、全世界規模でも、求められています。政策科学研究所は、その点をふまえて、最高学府としての「大学」の根本的な在り様が実現する複合的視点=“UNIVERSITY”という個性を活用したシンポジウムを実施しています。ここでは、兵庫県立大学の各組織、各大学・研究機関、政府・自治体、企業等との連携を展開しています。そして順次、最新の知見を取り入れた専門家と実務家が登壇するシンポジウム等を開催し、多くの方が十分に質の高い情報を手にできるよう、計画しています。政策科学研究所は、文理融合や人文知と社会知の融合等の取り組みから、皆様とご一緒にSDGsの実現に向かいたいと考えています。
政策科学研究所
ウクライナ侵攻後の世界経済(2022年6月6日)
SDGsの目標の中に公正、平和かつ包摂的な社会を推進するというものがあります(SDGsの目標16)。ロシアのウクライナ侵攻はこの目標から大きく乖離したものでした。ロシアのウクライナへの侵攻が世界を震撼させたことに対し、日本は西側諸国の一員として自由主義経済社会を守るための行動をとっています。確かに平和な国際社会を構築するためには、ウクライナの経済復興に周辺各国が協力してなすことも必要です。一方、ロシアは、ベラルーシなど、かつてソビエト連邦を構成していた一部の国々と連携しながら、中国やインドなどとも関係を深め、独自の経済圏を世界に作り上げようとしています。これについて、政策科学研究所は経済学から問題にアプローチするシンポジウムを開催しました。そこで示された我が国の未来の処方箋は脱ロシアと脱炭素社会でした(令和4年度第1回シンポジウム関連はコチラ)。
脱炭素を可能にするアンモニア混焼による発電(2022年11月22日)
現在におけるエネルギー問題は、世界が直面している諸課題の核心の1つであり、雇用、食料生産、安全保障、水資源、加えて気候変動等も、エネルギーの持続可能性と結び付いています。石炭火力発電所での補完的燃料として、水素由来の「アンモニア」を石炭と混焼させることの意義や可能性を議論するシンポジウムを開催しました。確かに「アンモニア」を燃焼させると、二酸化炭素は排出されませんが、二酸化窒素が排出されるため、これをリスクと見る向きもあります。「アンモニア」が与える発電所の機材へのダメージも考えねばなりません。しかし、石炭に限らず、メタンとの混焼なども可能であり、その組み合わせの将来性を見落とすことはできません。本シンポジウムでは、石炭火力発電所は、いかなる技術をもってこの困難な状況を脱するか、そのためのリスク管理はどのようなものであるべきか等を多角的に検討しました(令和4年度第2回シンポジウム関連はコチラ)。
法人限定の電力先物取引(2023年3月4日)
わが国では、電力市場が多様な形態で存在しています。スポット市場、時間前市場、先渡市場、調整力市場、ベースロード市場、容量市場、非化石価値取引市場などに目配りしますが、再生可能エネルギーの比率が高まるとともにこれらの市場において価格が高騰するために、リスクヘッジとして法人のみが参加できる電力先物取引のニーズが増大することが見込まれています。そこで電気先物取引の活性化に注目して、電力の総合的な市場設計等について検討しました。本シンポジウムは、実務的な説明も盛り込んで、理解が困難とされる電力先物取引について知ることができる「啓蒙シンポジウム」であり、国際公共経済学会との共同開催とし、そのメインイベント企画として議論を深化させました(令和4年度第3回シンポジウム関連はコチラ)。
メタネーションがある未来(2023年6月16日)
SDGsに適合的な脱炭素(カーボンニュートラル)社会の創出に合わせ、「水素社会」の到来を期待する声が増えています。本シンポジウムでは、メタネーションやプロパネーションの可能性を追及しました。主として工場から二酸化炭素を回収して、水素と合成し、メタンガスやプロパンガスを生成する技術には、バイオマス発電と同じ根拠により、新たな温室効果ガスは排出されない論理を展望できます。電気や都市ガスやプロパンガスを利用することを念頭に、「新燃料」を育てるために、民間企業に十分受け入れ可能であり、学術的にも合理的な制度設計が提言されました。東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの都市ガス最大手三社や国の担当者にご登壇いただき、どのような設計でメタネーションやプロパネーションをやり遂げるのか等のご説明をいただきました(令和5年度第1回シンポジウム関連はコチラ)。
サステイナブルな社会と日本酒の世界(2023年11月18日)
脱炭素な社会は、コア技術の確立によってのみ実現されるわけではありません。例えばコメは、稲作において二酸化炭素の排出が避けられないにもかかわらず、我々の生活に不可欠な消費財となっています。そこで本シンポジウムでは、「世界にアピールできる日本の個性」という観点から、持続可能な社会の実現に際しての現代清酒業の貢献について考えました。そして脱炭素社会構築の道程では「企業による多種多様な環境投資の積み重ね」と「日本文化に対する消費者の矜持」との結合が肝要になるとの方向性が示されました。なお本シンポジウムは御影公会堂にて実施され、後援を白鶴酒造㈱、菊正宗酒造㈱、東灘区、御影自治会連絡協議会、一般社団法人住吉学園、住吉歴史資料館から頂き、産官学に地域連携を加えたイベントとなりました(令和5年度第1回シンポジウム関連はコチラ)。
共生と芸術文化(2024年3月10日)
グローバル社会におけるコミュニケーションは、「わかり合えない」ことから始めることが肝要となります。本シンポジウムでは、社会的分業の拡大の基礎にはコミュニケーションが伴うことをふまえ、グローバル化の進む日本社会に対する「芸術文化の貢献」という観点から、芸術文化の中長期的な供給構造について検討しました。平田オリザ芸術文化観光専門職大学学長による演劇などの芸術文化の社会的貢献に関する講演を土台として、美術館の取組、イギリスにおけるアートカウンシルの歴史、欧州の芸術文化イベントの展開が登壇者3名により紹介されました。そして兵庫県は芸術文化政策を先導する潜在的価値のある地域であることが確認・強調されました(令和5年度第3回シンポジウム関連はコチラ)。