所長からのご挨拶

兵庫県立大学政策科学研究所は、伝統ある兵庫県立大学附置研究所のひとつです。
兵庫県立大学政策科学研究所は、70年を超える歴史をもつ研究所として、それぞれの時代の要請に応える研究調査活動を進めてまいりました。この研究所は、我が国初の新制公立大学である神戸商科大学が、「経済研究所」として昭和25年(1950年)に設置したことを嚆矢とします。「経済研究所」は平成16年(2004年)の三大学統合を基礎とする兵庫県立大学発足時に、「経済経営研究所」となり、平成22年(2010年)には、現在の「政策科学研究所」に名称を改め、政策科学の研究を深めつつ政策提言を行う研究機関となっています。
概要 : 政策科学研究所は、脱炭素社会の構築と豊かな未来の創造に向けて提言します。
政策科学研究所は、脱炭素社会の構築を中心とするシンポジウムや政策提言に向けて、様々な機会を活用して取り組んでいきます。先進国を中心に世界で取り組まれている持続可能な開発目標(SDGs)については、本学の多くの部局においてこの視点を取り組んだ様々な取り組みが行われ、政策科学研究所もそのような組織の一つとなっています。
政策科学研究所の最大のテーマは、脱炭素社会の構築を基盤とする豊かな未来の創造です。我が国も各国の動きと歩調を合わせ、カーボンニュートラルを志向していますが、その実現において不確実性や関連の諸問題が指摘されています。政策科学研究所は、いかなる技術をもってこの不確実な状況を解決していくのか、そしてそのためのリスク管理等はどのようなものであるべきかを多角的に研究し、その研究を深化させ、脱炭素社会の構築に関連する様々な提言を行います。直近の問題・危機ではないものの、その実現性が高い問題・危機の到来と様々な悪影響を直視して脱炭素社会の構築に取り組むことは、現在の総合大学の責任として、問われるべきものとなっています。
脱炭素社会の構築を背景とする現在のエネルギー問題は、グローバルから様々なレベルで直面している諸問題に大きな影響を与えており、気候変動を始め、安全保障、食料生産、水資源、地域振興、雇用等に関連する問題が相互に関連していきます。そこでは、脱炭素社会の構築に向けた不確実性や問題に加えて、エネルギーバリューチェーン等に関する不確実性や問題、持続可能な地域社会に関する問題等が顕わになっていきます。脱炭素社会の構築への注力に加えて、脱炭素社会の構築を背景とするそれらの諸問題を、関連性も含めて理解しながら、解決に向けた取り組みが重要となります。
政策科学研究所は、気候変動といった世界が抱える大きな問題の解決のために、特に水素社会の実現のため、グリーン水素等の生産活動の優遇を始め、二酸化炭素の分離・貯留・活用技術やメタネーション等の新技術への投資、またそれらを可能にする様々なリスク管理、そして脱炭素型コモディティー市場の活性化等のアプローチの必要性を考えます。これらの取り組みに関連してエネルギーバリューチェーン等に関する問題、持続可能な地域社会の振興等に関する問題へのアプローチの必要性も考えます。
政策科学研究所は、私たちの暮らしを持続可能な形で改善し、次世代に継承するため、カーボンニュートラルを目指す技術革新に着目していきます。そして、脱炭素社会の構築と豊かな未来の創造に向けてデザインし、提言していきます。
政策科学研究所長 田中 隆