IPSプロジェクト
「明舞団地におけるエリアマネジメントのあり方に関する研究」
担当者:和田 真理子
明舞団地は昭和40年代前半に開発されたわが国でも最初期のニュータウンの1つであるが、現在では人口減少・高齢化・タウンセンターの衰退に悩む 「オールドニュータウン」となっている。GISの分析によれば、神戸都市圏の中でも高齢化の速度が最も早い地区の1つであることが明らかとなっている。ま た、昨年度には全世帯アンケート調査を行い、団地内商業施設の利用状況や商圏の広がり、住民の行動範囲や、近所や地域とのつながりについて解明されつつあ る。この調査は多くの被験者を対象にデータを取得することによって、母集団(ここでは明舞団地住民)の生活実態全体を把握することを狙いとしたものであっ たが、住民の生活行動についてより具体的に把握することには限界があった。
そこで、本プロジェクトでは、昨年度の結果を踏まえ、150世帯を抽出し団地住民のライフ・ヒストリーや家族の生活実態や年齢構成を明らかにするこ とによって、住民生活の「質」向上のための施策を提案し、明舞団地の将来を描き出す。さらに、高齢化が急進する明舞団地住民を対象に、QOL向上の可能性 を探るためのICTを活用した小規模な社会実験を実施する。
2009年度に実施したアンケート調査によれば、明舞団地の将来を考える上で、住民の家族構成、日々の生活行動、団地生活への期待・要望、エリアマ ネジメントの必要性などを仔細に把握することは不可欠である。さらに、アンケートでは高齢者の生活がQOLを維持することが困難な状況が看守された。そこ で、今年度は高齢者のQOL維持・向上に向けて、ICTを活用した小さな社会実験(今後の検討する本格調査へのプレ調査)を実施することとした。
こうした現時点での明舞団地実態捕捉を踏まえ、2010年度調査では、購買行動の実態、団地内商業施設の利用実態、住宅への満足・不満と住み替え意 向、団地内の人間関係の実際やこれをサポートするまちづくり施策(団地マネジメント)、明舞団地の将来ビジョンのあり方などについて、インタビュー形式で 情報収集を行う。 団地は、居住者を核に、住宅空間(居住・すまい)、経済空間(商業施設等)、社会空間(コミュニティ)そしてハードとしての物的空間によって構成されてい る。暮らしの満足・不満は、これらの関係性の「ズレ」によって顕在化することになる。この半世紀の間に、居住者の変化(高齢化、世帯構成の変化、退出・新 規入居)のなかで、4空間の関係性は大きく変化してきた。
本調査は、こうした変化の実態を聞き取り調査から具体的に明らかにするとともに、顕在化した「ズレ」を修復・再生・創造するための具体的政策を検討するものである。
2010年12月23日 更新