お知らせ
研究員外部訪問:「脱炭素に向けた挑戦 関西企業の取組み発表会」
2025年2月28日、独立行政法人中小企業基盤整備機構近畿本部主催の企画「脱炭素に向けた挑戦 関西企業の取組み発表会」を聴講し、脱炭素にまつわる最新の企業行動について知見を広げました。
世界的なカーボン・ニュートラル推進の潮流のなかにあって、サプライチェーン全体で脱炭素に向けた動きが進み始めたことをうけて、実際に脱炭素に挑戦する関西企業の取組内容や展望、課題の発表(下記5報告)がありました。
カーボン・ニュートラルをめぐる取り組みの先行き不透明性を解消するため、大企業による先行的活動をふまえ、それに続く中小企業の脱炭素化をめぐる具体的取組の紹介が、同企画の意図でした。
基調講演「カーボンニュートラルの実現に向けた戦略」
基調講演
「カーボンニュートラルの実現に向けた戦略」森原雅幸 三菱重工株式会社 カーボンニュートラル推進室長
取組Case1
「環境機器メーカーが目指す、未来のカーボンニュートラル」松原啓一 コーベックス株式会社 代表取締役
取組Case2
「東大阪の印刷会社が取り組む省エネから始まる脱炭素」奥良二 株式会社精巧社 常務取締役
取組Case3
「CFP算定への挑戦~カーボンニュートラル実現に向けて~」小林直樹 日精テクノロジー株式会社 管理本部 総務人事部長
施策紹介
「2025年度 最新の中小企業施策を解説」藤田力 経済産業省 近畿経済産業局 資源エネルギー環境部カーボンニュートラル室 室長補佐
森原講演では、まずバリューチェーン全体の脱炭素化という新たな視点が強調されました。
三菱重工グループでは、2021年のカーボンニュートラル宣言をふまえ、CO2回収を戦略技術とする新たな事業領域と把握し、三原工場で先行実現プロジェクトとして実施されている省エネと合理化をめぐる細部にわたる関連設備投資が進められています。
これを含む同社の経験をふまえると、同社開発の「MACカーブ」概念を利用してバリューチェーン全体を脱炭素化していくことが第一歩になるとの展望が示されました。
各報告の狙いは照明のLED化など個別企業の脱炭素投資の取り組みや政府によるSBT認定手続きの具体例紹介でしたが、政策研究所の関心からみて注目されるのは次の点でした。
松原報告において、各種工場で使用される溶剤リサイクルが環境対策としての有効性と経済合理性を両立させうるものであるとの説明がなされました。
奥報告において、脱炭素化の取り組みが企業の営業成績に影響しはじめていること、空調設備の見直しなど生産効率の改善に脱炭素化の視角を取り入れうることが紹介されました。
小林報告において、顧客からの要請に応じて、海外工場においてCFP算定を利用した主力製品の脱炭素化が進められていることが説明されました。
なお報告後に行われた近畿経済産業局の藤田氏の解説によると、直近の経済産業省の中小企業政策としてGX支援が強化されていくとのことです。
今回の聴講によって、脱炭素化には企業ブランド・イメージの向上と関連させることが利用できる点に加え、市場と合理化投資の因果連関が累積・拡大していくことが脱炭素社会の実現には有効であるという示唆が、政策科学研究所として得られました。
※企画チラシ(リンク先:独立行政法人中小企業基盤整備機構)
https://www.smrj.go.jp/press/2024/pg85um000000796w-att/20250124_kinki_press01.pdf