阪神・淡路大震災を契機に、地域の住民や企業、学校といった多様な主体が自ら地域づくりに携わる、それをNPOや専門家等外部の支援者が応援する「新しい公」の役割が認識されるようになりました。行政による「公助」の場合、大多数の被災者に共通したニーズに対応したり制度を構築したりすることに傾注しがちですが、「共助」では身近な被災者に寄り添い個々のニーズを解決することから活動を展開するケースが多いです。「自助」により自ら解決できる能力を向上させるのも重要です。官民が連携し相互に補完することで効果的な役割分担が期待できます。
復興では、被災者の生活や住宅の再建への公的支援は個人の資産形成につながるものとして、被災者の自己責任や自助努力に委ねられ、被災前の状態にすら戻れない被災者が多数発生しました。そうしたなか、阪神・淡路大震災では、「新しい公」によるコレクティブ・ハウジングや高齢者見守りシステム、専門家を交えた復興まちづくり、コミュニティ・ビジネスなど新たな仕組みが提案されました。新潟県中越地震でも、中間支援組織や有識者等が支援することにより集落再生のための取り組みを展開しています。台湾地震では「一村一品」運動が実施されました。これらに対し「復興基金」や「義援金」を活用し、財源面で「新しい公」を支援する仕組みも実施されています。
これらは災害を契機にした社会的実験ともいえます。これを災害復興にとどめず、その後の地域再生につなげられないでしょうか。少子高齢化や成熟社会においては、かつての高度経済成長時代のような右肩上がりの成長を期待できず、既存のシステムに変わる新たな発想や仕組みが必要です。復興をバネにした様々な試みを全国の地域再生に汎用できないか、「新しい公」による地域再生モデルの構築が期待されるところです。阪神・淡路、新潟や能登での地震や海外における災害後の先進事例や課題を調査しながら、そうした地域再生モデル構築のため研究を進めています。海外でも復興に関する研究は不充分であり、地域再生につなげる研究は国際貢献の観点からも有益なものと考えられます。
これまでの論文では、